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問答

19日、資料会。洋書、絵本、単行本、展覧会図録など買う。上井草へ移動し、井草ワニ園さんに補充。なんとなんと。店長さんがさらに2本、新たなる本棚を設置してくださっていた。ようやく埋まってきたかなと思うと増殖するので補充しても補充しても本が足りない。うれしい悲鳴。本当にありがたい。長谷川郁夫『美酒と革嚢』、アンドレ・ブルトン『秘法十七』、酒井啓子『移ろう中東、変わる日本 2012-2015』など追加する。今後の展開についてワニ園店長さんと談合。来月あたり大きな進展をひとつ、あるいはふたつ。画策する。

20日、終日家で作業。在庫整理を徹底的に。市場出品用荷造りやアマゾンの商品アップ、ヤフオクの撮影などいつかやらねばと気がかりになりながら放置していたことどもをことごとく片付ける。ためていた洗濯、掃除などもする。

徳川夢声の対談集『問答有用』。夢声が各方面の著名人を相手に語らう。全12巻のうち10巻までは市販されたが残る2巻は私家版となった、その最終12巻を読んでいる。対談相手一人当たり2段組み10ページ程度の分量は移動中の読書に最適である。大江健三郎、黒川利雄、渡辺武次郎、有吉佐和子、石原裕次郎、安藤鶴夫、加東大介、河井寛次郎、森繁久弥、鏑木清方、宮本顕治、松本清張、本因坊秀格、山崎豊子、長島茂雄、東郷青児、川上哲治、石井獏、小杉放庵、谷崎潤一郎などなど、バラエティに富んで魅力的なメンツ。誰も彼もこだわりのない語り口であるのは、どの分野であれ超一流というものが覚めたリアリストだからなのか、それとも夢声というこれもまた超一流の聴き手を得て胸襟を開くのか。どの人の言葉にも率直で嫌みのない情熱がはらまれており、読後感はきわめて爽やかである。僕には遠い過去の偉人のように思われる人が老人として、いままだ存命の方々が若者として、登場していることは歴史というものが一度も途切れたことのない地続きのものであるという当り前のことをしみじみと実感させる。

ルーキーイヤーを終えたばかりの長島茂雄のページでは夢声が「こんどまた、早実の王選手がはいってきて、巨人軍も投手陣が補強されますね」と水を向け、長島が「うちは投手陣がほかの球団より薄いんですけど、これでよくなります。王選手ってのは、いいからだをしてますし、打つほうも投げるほうもいいですから」と応じるなどは面白い。

導入文で夢声をして「人間なんでも噛っておくべしということである。(中略)お蔭で無口の加藤少年から、とにかくこれだけ話を引き出すことができるのである」と言わしめ、対談中でも

夢声 小学生のころから、だいたい無口なほうなんですか。

加藤 ええ、無口です。学校の通信簿に性格を書く欄がありますね。そこへ担任の先生が「無口」と書いていました。

などというやりとりのあるこの加藤とは時の天才少年棋士・加藤一二三{18歳(!)}なのである。人は変わる。


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