

梅ヶ丘「時々カフェ」
29日正午、なんとなくひま、ゆったりした余裕のある気分でこの先数日間のスケジュールを立ててみると予定が立てこんでいる。明日でいいかぁ、と思っていた調布パルコの補充に断然行かねばならない。昼過ぎから準備、夕方借りた車で出発。帰ってからは翌日搬入予定の新規出張販売用の荷物を用意。全然余裕がない。 全然余裕がないさなか、駐車場から近いばかりに超大型新古書チェーンの自宅最寄り店に足を踏み入れる。ある作家(夏目漱石の弟子)の全集の端本がとてもここには書けない安値で並んでいて心臓麻痺を起こしそうになる。買い占める。(店で発見したときは揃いだと思ったのが、家に持って帰ったら端本になっていた。頭に血が昇って幻覚を見たのだろうか。奇妙奇天烈) 30日、市場出品物と出張販売の荷物を積んだ車でまず神田へ行き、中央市に出品手続き。市場に置いてあった先週落札分の積み込み・注文品の発送・市場買入分の清算・南部会館の鍵の作成手続きなどで時間をつぶしてから開場した中央市で入札し、南部会館へ。水曜フリ市出品の荷を下ろし、続いて新規出張販売の設営のため梅ヶ丘へ。設営を終えたのち、中


無理な依頼
27日、在庫の整理と市場出品用荷造り。事務所の一角を占拠し、目に入ると気分まで乱雑になるため見ないようにしていた本の山を崩すなど。ずいぶん片付いた。 28日、「吉祥寺パルコの古本市」補充。ちょうど文紀堂書店さんも補充にいらしていた。昨日一昨日と独り閉じこもって用意してきた紙モノ類を並べていると、「最近いいことがあって」と文紀さんに声をかけられる。聞けば、買取に行ったお宅で自分の店に依頼してくれた理由をお客様に尋ねたその答えのことだという。かいつまんで書くと次のようなことである。――ある日、本の整理を考えながらも依頼する古本屋を決めかねていたそのお客様が表参道を歩いていた。すると目の前を歩く二人組が偶然にも古本屋の話をしている。「このあいだすごくいい古本屋に本を買ってもらったんだけど」と言うので聞き耳を立てているとそれが文紀堂書店という古本屋らしい。こんなに確かな口コミはないと背中を押され、とうとうお客様は依頼先を決めることができたのだという。調布のお店が表参道でお客様を得たのである。「真面目にやってるといいことがあるよね」とおっしゃる文紀さんに胸


最高の一日
遅く起きる。終日家にこもって作業。不足備品の発注、アマゾンUP、吉祥寺パルコ補充用の紙モノ500枚超の値札付け、ヤフオクUPなど。これといって何も起こらず、ひらめきもあたらしい着想もなし。誰も訪ねてこない。電話が一度だけ鳴った。 値札付け作業をしながらドラマ『カルテット』を観る。坂元裕二脚本。来週も観よう。影響されて夜、唐揚げを食べる。アイスも食べようと思って買い忘れる。そういえば昼はたまたまホットサンドだった。 刊行年表記なし、おそらく19世紀末頃にパリで刊行された画家マルス(モーリス・ボンヴォワザン)のイラスト集『AUX BAINS DE MER D'OSTENDE(オステンドでの海水浴)』。ベルギーのリゾート地オステンドの海水浴場の光景を描く。この線。この絵。この色味。そしてそこはかとなくただようユーモア。


薄利少売
「吉祥寺パルコの古本市」補充→資料会へ。資料会では19世紀末パリ刊行のイラスト集を1冊落札しただけ。ひょいと拾い上げて持って帰る。いつもこういう仕入れだけで商売ができると楽だ。風呂敷ひとつで商売をするというのは古本屋が持つ理想の最上級。軽くて高いものを少量売って暮らすのだ。駆け出しの身ではその真逆をやるしかない。重くて安いものを大量に買って売る。なるほど薄利多売かと思われるかもしれないがそれは違う。あなたがもし古本屋になったら間違っても「私は薄利多売ですから」などと先輩に向かって言ってはいけない。殊勝ぶったつもりでもかならずや「ほほう、多売ですか、これはうらやましい」などという冷やかな応答を受けることになる。まさか、そんな対応は信じられない、とお感じなら、あなたがいまいる社会はまともな社会だから古本屋になろうという野望などは忘れた方がよろしい(そもそもそんな野望がないならそれがいちばん安全です)。古本業界とはかくもひねくれた人間の集団なのである。それでももし、万が一あなたが古本屋になるのなら、こんなときのために「薄利少売」という理屈の通らない言葉


かんじんなこと
上井草へ。井草ワニ園古本棚とSLOPEさかみち書店の補充。 さかみち書店に補充した『星の王子さま』は裏見返しに書込みあり。昨日の準備作業中、最初の状態チェックでは気付かず、何の気なしに値札を貼ろうとするとどうも違和感があってななめからの光にかざして発見した。夜空を表現した黒に近い濃紺の下地に黒いマジックペンで書いてあり、一見するとそこに書込みがあるとは思えない。なんという陰湿な古本屋いじめだろう。泣く泣く格安値札に貼り替え、どうしてこんな秘密めいた書き方をしたのか、きっと恥ずかしいことでも書いてあるにちがいない、せめてもの腹いせにその秘匿せんとするものを暴いてやろうと書込みを読んでみる。するとこの本を3人の子供(三兄弟?)に送った人物が子供たちに宛てたメッセージのようである。意に反してたいへんに心のこもった愛のある、そして(その手のものが往々にしてそうであるように)平凡なメッセージであり、読み進めるうち半額になった売値の恨みがつのる。文章の右手には星の王子さまの姿が描かれ、それがわりあいにこなれていて上手なのもかえって憎たらしいこと。坊主憎けりゃ