黄金週間・リターン
ゴールデンウィークは終わった、と言われて久しい。だが僕にはそんなものがあったような気がしない。だから終わったような気もしない。
15日~21日。今週末21日は石神井公園の氷川神社で行われる「井のいち」に出展する。ポラン書房時代から関わっていた、地域の個人商店やアーティストなどが集まった一大イベントである。開催場所も集まる人も雰囲気も、なにもかもがすばらしいイベントに独立一年目からお声掛けいただいて最高の気分。だけど商品は間に合うのだろうか。心躍り勇気凛凛、湧き上がる不安という複雑な心境で幕開けた一週間である。
15日、「東京蚤の市」の残務、「調布の古本市」の補充、南部会館(五反田)で入札市買上品の引き上げ、フリ市の出品をする。東京を縦横無尽に走り回った。夜、3年前に古書店員として取材されたテレビ局のディレクターとカメラマンのおふたりに独立祝賀会を催していただく。四谷三丁目のチェコ料理屋「だあしゑんか」で。チェコ関連本が並ぶ店内は雑誌などではたびたび見たことがあった。念願の初訪問。おいしゅうございました。
16日、井草ワニ園さん補充。小島信夫、マルケスなど(この時補充した小島信夫とマルケスは5月中に売れた。ありがたい)。備品の注文などもする。
17日、SLOPE「さかみち書店」補充。村上春樹+安西水丸『象工場のハッピーエンド(単行本版)』、植草甚一『モダン・ジャズの発展』など追加する(『象工場~』はこのあと1週間もせずに売れた。うれしい)。相談事あり、阿佐ヶ谷のコンコ堂さんに立ち寄ったのち、調布へ。「調布の古本市」の補充。湯村輝彦が挿絵を担当した『アメリカの旅キャタログ ザ・ウエスト』などを補充し、殺風景だった棚に赤と緑の布をかけて色気を出すなど。
18日、「井のいち」の準備に没頭していたら甥っ子が生まれた。イケメンらしい。
19日、午前「井のいち」準備作業、午後「調布の古本市」レジ当番。
20日、朝から「井のいち」の準備をし、出宅。所沢のブックオフでセドリを少々、それから髪を切り、車を借りて調布へ。古本市の棚からあらかじめ考えていた何点かの商品を「井のいち」用にピックアップ。そのまま神楽坂で買取。これがすばらしい買取だった。僕好みの本が多く、保存も良好、引っ越しで泣く泣く手放されるというご依頼主との、相通じるところの多い本談義も楽しかった。22時過ぎ、家に戻り、「井のいち」の品揃えを急遽調整する。いま買い取ったばかりの本をなんとしても並べたい。深夜、すべての作業を終えると「井のいち」の商品はその質を格段に向上させていたのである。噂には聞いていたが「買取の神様」は実在した。
21日、「井のいち」。神社境内奥の木立の中で、すばらしい時間を過ごす。イベントの集客自体が多いなか、たくさんのお客様に本をご覧いただき、お買い上げいただいた。売上もさること、前週の「東京蚤の市」でけして安売りしていない本が売れていくロスパペロテスさんの棚を間近に見て以来、自分でも同様のことをと胸に秘めていた企みを実現する機会を早々に得、結果想像以上の手ごたえを得た、そのことの喜びが言葉にならない。いい(と僕が感じる)本を、一冊の本を買うにしては安くはない値段で、それなのにさっと買って、しかも喜んでくださるお客様がいること、少なからぬその人数に勇気づけられ、帳場に立ちながらずっと感動していた。こんなにすばらしい時間はなかった。