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うじうじする

1日、どうしてもあきらめきれない。昨日から何度も、あの日心臓が止まりかけたその瞬間から会計するまでの行動を思い返している。補充用の在庫を積んだ赤いブックトラック。その中にバラバラになって混じっているのを見つけ、はやる気持ちを抑えながら巻数順に整列させたのだ。その光景を思い返すたび、眼の前には全巻揃ったあの全集の品の良い背表紙が並んでいる。夜も更けて客の姿もまばら、なんとなくわびしい店内でそこだけがはげしく輝いていた。あまりにも強烈な光に包まれていて23巻と27巻が抜け落ちていることなどは気付くべくもなかったのだろうか。そんなことがあるだろうか。

どうしてもあきらめきれないで午前中、超大型新古書チェーンの自宅最寄り店を再訪。くまなく見て回るが欠巻2冊は見当たらず。あの日同じブックトラックに並んでいた『木村荘八全集』の端本もすでに胡散霧消し、わずかに残る『芥川賞全集』の端本数冊があの輝きの名残をとどめているばかりである。

あきらめよう、もともと端本だったのだ、と思いながらも、いや、あの時、急いた俺がレジに持っていこうと全集の山を抱えたその時、ブックトラックには俺に見逃された2冊が息をひそめていたのではないか、そうして生きながらえた2冊は今日までの間に別の誰かによってさらわれたのではないか、などと想像をたくましくする。うじうじ考え込んでいても仕方がない。あと10分だけ力の限りうじうじ考え込むのを許すことにしてそれですっぱりあきらめようと決意し、10分間うじうじと考え込みすっぱりとあきらめる。

のち、資料会へ。おかっぱちゃんハウスさん向きと思われる旅関連の単行本の山を落札できた。現行品ではなく茶色っぽい(ものによっては黒ずんだ)古い旅のエッセイなどで中身も装丁もおもしろいものが入っていそう。来週事務所でほどくのが楽しみ。その他に洋書なども買えた。

吉祥寺へ回ってパルコの古本市の補充。昨年末発行のものも含む新しい文庫を追加。自店、他店の棚整理をしていたらあっという間に2時間近く経っていた。18時に会場にて創業セミナーでご一緒だったKさんと待ち合わせ。桜台に雑貨のお店を開かれることになり、その一角に絵本を並べられないかとのご相談。名店トークバック・ビコックへ移動し、Kさんのお嬢様(雑貨店で店長職をおつとめになる)も交えて食事をしながら打ち合わせ。4月以降スタートで出張販売をやらせていただく約束を交わす。3人でワインを2本空けたたのしい宴席。

2日、ほとんど休み。午後まで寝たり起きたり。夕方から注文品の発送、各種支払い、備品買出しなどで外出。帰宅して吉祥寺パルコ補充用と井草ワニ園補充用の値札付け、各種連絡。各所で売上を受け取るたび、どんどんお金が入ってくる、お金が余っている、軌道に乗ったぞ、と心があたたかくなるが、請求書を受け取るたびたちまち冷却される(お金は余ってなどいないのだ!)。学習能力がない。

シリーズ「探せ! 千明初美作品集『ちひろのお城』」

吉祥寺の大型書店2店を当たるも在庫なし。通算5連続空振り。たまたま漫画担当でない方に当たっているからかもしれないが、ここまで尋ねた書店員のみなさんはそもそもこの本の存在を知らない様子である。満を持してサンロードのブックス・ルーエへ。コミックコーナーの充実ぶりは万人の知るところ。最後の頼みの綱。3階コミックコーナーでレジの店員さんに尋ねると一瞬考え込むような間があって「あ、この人も知らないのかも」という思いが頭をかすめる。と、店員さんは無言のうちにすたすたと歩き出して特集棚の一角を指し示してくださるのであった。おお、面陳されている。パソコンで在庫検索なんてしないのですね。これだからブックス・ルーエはやめられない。ブックス・ルーエ万歳!

ああ、それにしても『新輯 内田百閒全集』。たしかに揃っていたはずなのだ。何度考えても。


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